『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』感想(ネタバレあり)

 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』を観た。前作『炎の王国』のラストで恐竜たちが放たれて以後、人間の住む世界と恐竜たちの住む世界が混じり合う中で、オーウェン、クレアと暮らしていたメイジーが何者かにさらわれてしまう。同時に、どこからか発生した巨大バッタの調査を行なっていたエリー・サトラーは旧友のアラン・グラントに助けを求める。

 

 シリーズ最終作としての致命的な落とし所ゆるさやストーリー上のいつくかの描写以外はとても楽しかった。恐竜の種類や見せ方、シチュエーション、人間×恐竜のアクションもしっかりおもしろかった。

 ストーリー面を含めた傑作ではないにせよ、ハラハラドキドキできる大作として十分楽しめるし、人に聞かれたらそのような留保を付け加えた上でお薦めするくらいには好き。以下良かったところと悪かったところ。

 


・まず良かったのは恐竜がらみのアクション、スペクタクル全般。冒頭のフッテージから、工事現場で眠るブラキオサウルス、パラサウロロフスと馬で並走するシーンなど、とてもワクワクした。

・マルタでのアクションも、筋のわからなさは置いといて、パルクール、車、バイクなど追いかけっこのシチュエーションを変えつつ、様々な角度やスピードで迫り来る恐竜の怖さを見せてくれて大変おもしろかった。

・谷に不時着してテリジノサウルスと隠れんぼするシーンも、ゆったりとした間や水に入っていく緊張感などすごく良かった。


・そして悪かったところは、正直なところ話の筋全般、特にオチのゆるさは如何ともしがたい…まあ、恐竜とどう「共生」するのか、クローン技術や遺伝子工学の功罪とどう付き合うのかなんて問いに対してそう簡単に答えなんか出せないし、それ自体は仕方ないのだけども、にしてももう少し真剣に悩んで欲しかった。恐竜スペクタクルされ見せればあとはなんとなくふわっと着地させときゃいいんでしょ?ってのはどうなのか。

・メイジーとベータの対比が全くと言っていいほど生きてこない(というか最後に忘れてたと言わんばかりに拾うくらいならそもそもベータを連れてくる必要もないし、登場させる必要すらなかったのでは?)。

・クローンとして生まれたメイジーに対して母の愛やらなんやらをあとから付け足して彼女の葛藤を有耶無耶にし、挙句の果てに遺伝子書き換えの研究協力において「母もそう望むだろうから」と言わせるのはさすがに酷いと思った。

・自分より上の世代の自分勝手な意図や意志にハッキリとNOを突きつけたのが前作のラストだったのに、今作でまんまとぬる〜く戻ってくるあたりはガッカリ。

・バッタについても、恐竜との対比もあまり生きてないし、同じように遺伝子をいじって作った生き物でも恐竜ならダメで虫なら何してもいいのかよとかも感じる。あと、最後に遺伝子を書き換えたバッタを放して一件落着風だったけど、このフランチャイズのテーマでもあるLife finds a way.に則るならば、バッタたちは絶滅しないでしょ。絶対なんらかで生き残ってそれだけで一個の話できるでしょ。

・これまでいろいろ文句言った分はまあ別にこんなもんかなってくらいだったけど、許せないのはグラントとサトラーをくっつけたこと。

 オーウェンとクレアがカップルなのも個人的にはどうでもいいくらいなのに、そんなところにまで無理矢理色恋発生させなくていい。確かにJPⅢで若干そういう描写はあったが、話の終盤にはなくなってたし、今回20年ぶりに引っ張り出してきて「幸せじゃなかった」とまで言わす必要性がわからない。

 最後、人間同士の助け合いや協調の重要性を説くんだったらなおさら血縁や性愛に拠らない人間関係を描けよ!おれはあの2人が対等な研究者としてリスペクトしあってるのが好きなんだよ!

・今なんのために何をやっているのかがちょくちょく訳わからなくなるのもノイズではあった。マルタでは誰がなんの目的で何をしてるのかがわからなくて、恐竜との追いかけっこが始まるまではちんぷんかんぷん。

 バイオシンに行ってからも、一応説明はしてくれるものの位置関係や時間の経過がわかりづらかった。トップガンマーヴェリックは丁寧だったなあ。

・電力回復のくだりも、一作目のオマージュなのはわかるが、さっきまで「ワールドのシステムと同じ!」と言ってたクレアが急にスイッチがわからなくなるのも意味不明だし、結局斧で解決するのもなんか白けちゃう。