『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』感想(ネタバレあり)

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』を観た。ドクター・ストレンジ前作とワンダヴィジョン、What Ifは一応観ているが、細かい部分までは覚えていないと思う。まず全体的な感想から言えば、要所のアクション・シークエンスやアイデアたくさんのビジュアルは楽しめたものの、ストーリーの面、とくにワンダの扱いに関して最初から最後まで納得がいかず、あまり面白くなかった。以下もう少し詳しい感想を思いつくままに書いてみる。

 

・いまだに聖母か魔女かの二面で女性を描くの?いまだ自分の力を持て余してちゃう若い女性やら「母性」が暴走しちゃう女性を描くの?

 

・ワンダは「より大きな正義」のために大切な人を失っていて、そこに関しての「不公平」がある(ナターシャだってそう)。その部分がこの映画だとまるっきりスルーされているように見えるし、ましてやその「不公平」さが生まれた構造についての言及や批判もない。

 

・最後もストレンジたちの手は汚させずにワンダを退場させちゃうあたりセコいというか、最後まで責任持って描ききれよと思う。

 

・ワンダとアメリカ・チャベスの対比もわかるんだけど、だったらなおさら『自分を信じろ』みたいなオチじゃない方が良いのでは。女性が力を発揮できない、正しく使えないのはちゃんとした自信がないからですって、そういう個人の問題に還元しちゃダメな気がする。この辺の、女性の能力と自己評価の話はエターナルズのセルシ周りが良く出来てたな。

 

・というか今回のヴィランがワンダにして徹底的に闇落ちさせる理由もいまいちわからないというか、「大切な人を失ってしまった悪者が特別な力を持つ少女を狙い、それを知ったストレンジが悪事を防ぐ」でいいんじゃないの?。←これ書きながら思ったけどこの話面白いかな?もちろん語り口やキャラの背景によってはいくらでもおもしろくなるだろうけど。この映画は自分にとって前者は良くても後者があんまりだった。

 

アメリカ・チャベスは、演者のチャーミングさはあったと思うけど、キャラとしての特徴や魅力はあまり感じられなかったな……彼女が突然宇宙の命運を握る力を持たされ、何を考えどう受け入れた(あるいは受け入れられていない)かをもう少し時間を割いて描くべきだったと思う。そうすればワンダとの対比ももっと良くなったと思うし。

 

・ストーリーと直接関係ないような見せ方の部分は結構楽しめた。冒頭の目玉クリーチャーとの戦いはスパイダーマンを思い出したし、マルチバース横断や音符投げ合い対決、ゾンビストレンジのくだりも見どころは沢山あった。ワンダによるイルミナティ惨殺シーンも楽しかった。

 

・ストレンジ個人のストーリー(恋人との関係に向き合えずに時が止まったままだったのが、また別の人生を経験・想像することによって前に進めるようになる)も、別に悪くないけどなんか普通だなと思ってそれほどおもしろいと思えず。