『Happy Smile Tour 2022』雑感

 

 日向坂46の全国ツアーHappy Smile Tour 2022東京公演の2日目を配信で見たので、その感想をば。とりあえず頭から思ったことを書いていって、最後にまとめられれば。

 

 モニターに映る、小さな光が集まってできた大きな丸い光をフードを被ったメンバーが割るオープニングから始まる。アイドルとファンの共依存的な関係を歌ったMy fansを挟んでダンストラック。My fans は、共依存関係のに自覚的なところは良いと思うのだけど、その関係性の閉じ方についてあまりにも開き直りすぎててあんまり好きじゃない。にも関わらず、その「日向坂らしくなさ」ゆえに重宝されている感じがちょっともやもやする。「上から目線」だったらなんでもいいわけじゃない。フード付きのケープを脱ぎ捨て、ライブ定番で「日向坂らしい」曲のNo war in the future からのキツネ。

 最初のMCは、虫を優しく退場させるキャプテンのスマートさと「お、ひなのちゃんこっちですよ」が印象的。4期生が加入したにもかかわらず日向坂のエケチェンの座を全く譲る気がない。


 MCからダンストラック、そして「耳に落ちる涙」へのシームレスな移行が良い。ここらへんになってもまだスロースタートというか、しっとりした感じでのトーンが支配している。語り手が悲しみを堪える「耳に落ちる涙」から「君のため何ができるだろう」の流れも内容的にバッチリ。


 「僕なんか」をメインステージでフォーメーション作るだけじゃなく、花道でバラけて踊ってるのが今までのパフォーマンスと違う印象で良かった。カメラに抜かれた時に映ってるのが1人だけだと、歌詞の響き方が違う気がする。

 「僕なんか」が発表されたとき、復帰したての小坂がセンターだと分かって「なぜそんなに負担をかける?」と思ったけど、彼女の纏ってるオーラが色んな意味で異質すぎてセンターに置かざるを得なかったのも今では少しわかる(だからといって体調が蔑ろにされてはいけないが)。休養前から華がありすぎてセンター以外に置きづらい、シンメで組ませる人がいない人だったと思うんだけど、復帰後は特に小坂の周りだけ時間の流れ方が違うかったもんね。今はだいぶ馴染んだ気がする。

 そして、前々から思っていはいたけど、金村美玖が名実ともにその悩みを解消するレベルに達したことをこのライブで確信した。存在感や表現力で小坂と並んでも遜色ない。なんというか、自信と自覚がある。


 「飛行機雲が出来る理由」から「君しか勝たん」の流れが唐突。「君のため何ができるだろう」と「勝たん」でそれぞれハート柄の傘とニコちゃんの口を持って踊ってたけど、あんまり上手くいってなかった気がする。「何か手に持ってた」以上のものがない。


 そして待望の4期生。みんな完成度が高くて、ダンストラックからの「ブルベリー&ラズベリー」がちゃーんとカッコよく仕上がってたのがめっちゃよかった。ここを「かわいい」「頑張ってる」みたいな雰囲気で押し通さないでしっかり勝負してきたことにグッときた。ダンストラックは平岡が1番印象に残った。キレもあったし見せ方が綺麗。ドキュメンタリーでの号泣姿やひなあいでのガチガチぶりを見て岸のことを勝手に心配してたけど、まったく問題ないどころかウインクまで決めててすごいなと思った。

 その後のMCで4期生が1人ずつ自己紹介するなかで、小西夏菜実が手で524773と表そうとしたのが片手がマイクで埋まってたため524553になっちゃってたのは今後の課題。片手で7を表す方法を見つけるか、5本指に足す2本指を隣にいるメンバー(当面隣が多そうなのは岸)がサポートしてあげるか。4期生がハケたあとの佐々木久美の「言葉でラブは伝えていかないと」「言葉にしないとわかんないからさ」って言葉がジーンとくる。このくらいの言葉をサラッと出せるのが日向坂のキャプテン。


 この次からの衣装がめっちゃ好き。期別の色分けもかわいいし、かっこいい曲も盛り上がる曲も何にでも合う。8thシングルのユニット曲を経て3期生曲の「ゴーフルと君」。

 小道具としてお菓子作りの調理器具を持ってたけど、ゴーフルに家で手作りするイメージはない……それはともかく、3期生ってこんなに逞しかったっけ?となるようなめっちゃ良いパフォーマンスだった。とくにぱるは気合が入っていたように思える。ライブ全体の最後にハケるときも、みんなが口々に「ありがとう〜」「楽しかったよ〜」というなか、めちゃくちゃでかい声で「上の方まで見えてたよ」と聞こえてきて、誰かと思えばぱるだった。そういうタイプじゃないと思ってたからびっくり。金村美玖についても書いたけど、自覚みたいなものが感じられる(と思ってたら、4期生の加入で心境が変化したことをブログで書いてた)。

 

 小坂復帰後の「キュン」は全然印象が違う。そりゃまあデビュー曲なんだから当初から時間も経ってるし印象が変化するのは当然なんだけど、にしても「違うな」と思うし、すごく落ち着きがある。上に書いたように、小坂の纏ってるオーラが変わったから、それが曲全体のトーンすら変えている。個人的に好きじゃないシャバい歌詞からちょうど良い具合に距離が取れてるというか、聞きやすくなった。このパフォーマンスで「キュン」のことが好きになりました。


 「真夜中の懺悔大会」はキラーチューンだなあ。なっちょセンターってのが上手くハマってるのかも。合いの手や煽りを入れる余白もあるし、ダンスやメロディもキャッチーだし、とにかくライブで映える。

 「恋した魚は空を飛ぶ」の見せ方、なるほどその手があったか。フルで踊る5人と体調面で懸念がある2人で分かれてそれぞれ振り付けも違うんだけど、「歌詞の内容は意味不明だけど世界観だけはやたら強い」というこの曲に合ってる。今回に限らずこういう演出がもっと増えても良いなーと思った。


 「アディショナルタイム」と「ってか」をライブの「最高潮」に持ってくるの、わかる。曲自体への信頼もそうだし、金村美玖センター曲ってのも重要だと思う。

 そしてこれまでのシングルを、センター選出中心に振り返った映像ののち、「月と星が踊るMidnight」。裏センター丹生明里の意義がようやくわかってきたかも。「日向坂らしさ」の象徴としての丹生明里が裏センターにいて、日向坂が掲げる「ハッピーオーラ」との齟齬を抱えると齊藤京子がセンター。

 アンコール前最後が「知らないうちに愛されていた」。日向坂が次のジョイラとして育てていくのは「飛行機雲」じゃなくて「知らないうち」になんだなあ。

 

 アンコールを終えて、一番最後のお辞儀担当が渡辺莉奈で「おおっ」ってなった。最年少&五十音順最後なのである意味当然ではあるけど、なかなかの大役をサラッとこなしていてすごかった。胆座ってそう。

 

 ここまでライブ通して観ていくと、個人的に気になるのは「日向坂らしさ」の扱いで、とくに冒頭の一連と、小坂菜緒の存在がおもしろかった。 

 冒頭の「太陽」を割るイメージからの流れは、「日向坂らしさ」を内省的に鑑みた上でそれらを叩き割り、新しい「日向坂第2章」を示唆するようなシークエンスに感じられた。その宣言としてのMy fansだとしたら、あの使い方も納得できるかも。

 そして、今年の東京ドーム公演までの3年間、センターとして日向坂の「スタンダード」を作り続けてきた小坂菜緒が再び「キュン」や「キツネ」をパフォーマンスすることで、否が応でもその変化を感じざるを得ないし、金村美玖のセンター曲を経て齊藤京子センターの最新曲までつながる流れはその変化をより推し進めようとする意思の表れに思える。

 ここまで何回も「日向坂らしさ」だのなんだの言ってるのはしつこい気もするしこじつけな気もする。でも、何もかもが「キャラクター」化されていくなかで「らしさ」と「リアル」のぶつかり合いや混ざり合いがアイドルを追いかける上での楽しさだと自分は思うので、これからもそんなふうに見ていきたい。とりあえず「お、ひなのちゃんはこっちですよ」目当てで来週のリピート配信もみたいと思います。